【連載】持続化補助金を「経営の羅針盤」にする:第3回 公募要領を解剖する「審査の観点」と「加点要件」の全貌

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第2回では、持続化補助金の本質が「経営者自らが未来を描くプロセス」にあるとお伝えしました。しかし、そのプロセスを「採択」という結果に結びつけるには、公募要領に定められたルールと審査基準を正確に把握しなければなりません。

今回は、審査の土台となる「基礎審査」と評価の核心となる「計画審査」、さらに採択の可能性を底上げする「加点審査」について、第19回公募要領に忠実に解説します。

目次

1. 審査の土台:基礎審査

計画の内容以前に、まずは「土俵に上がっているか」が厳格にチェックされます。

  • 要件の合致:小規模事業者の定義(業種ごとの従業員数)を満たしているか。
  • 対象外の排除:大企業の実質的な支配下(みなし大企業)にないか、過去の不正がないか。
  • 必要書類の不備:様式が最新か、必要な添付資料が全て揃っているか。

この基礎審査で一項目でも不備があれば、どれほど優れた計画であっても内容を見られる前に失格となります。特に第19回公募の最新様式を使用しているか、細心の注意を払ってください。

2. 評価の核心:計画審査の「4つの柱」

計画審査では、主に以下の4つの観点から「事業の質」が評価されます。

① 自社の経営状況分析と市場環境の把握

単に「頑張っています」ではなく、自社の「強み」と「弱み」を客観的に分析できているかが問われます。また、顧客が何を求めているのか(市場ニーズ)を把握した上で、競合他社とどう差別化するのかを明記する必要があります。

② 経営計画の適切さと一貫性

策定した経営計画が、①で分析した課題を解決するための「対策」として適切かどうかが重要です。課題と目標、そして具体的な取り組みが一本の糸で繋がっている「一貫性」が、説得力の源泉となります。

③ 補助事業の具体性と実現可能性

今回の補助金を使って具体的に「いつ」「誰が」「何を」するのか、その実行体制が整っているかが見られます。小規模事業者の限られたリソースで、無理なく完遂できる計画である証明が求められます。

④ 補助事業の効果

取り組みの結果として、売上拡大や利益率向上、あるいは生産性の向上が期待できるか。その予測が合理的であり、事業の持続可能性を十分に高めるものであることが評価のポイントです。

3. 機会損失を防ぐための「加点審査」

審査の合計点に上乗せされる「加点」は、採択の可能性を堅実にするための重要な要素です。第19回公募において、加点は以下の2つのカテゴリーに分かれています。

ここで注意すべき重要なルールは、「【重点政策加点】から1種類、【政策加点】から1種類の、合計2種類まで」しか選択できないという点です。同じカテゴリー内から複数は選べないため、自社が満たせる最適な組み合わせを考える必要があります。

A. 重点政策加点

国が現代の経営課題として特に重視している項目です。

  • 赤字賃上げ加点:賃上げに取り組む事業者のうち、直近の決算期において税引前当期純利益が赤字である場合。
  • 事業環境変化加点:物価高騰やエネルギー価格の上昇、インボイス制度の導入などの外部環境変化に直面している場合。
  • くるみん・えるぼし等認定加点:次世代育成支援(くるみん)や女性の活躍推進(えるぼし)などの認定を受けている場合。※この他にも、東日本大震災等の被災事業者に係る加点や、災害加点等が存在します。

B. 政策加点

地域の振興や経営基盤の強化に関わる項目です。

  • 地方創生型加点:以下のいずれかの類型に即した事業計画を策定し、取り組む場合。
    • 地域資源型:地域資源等を活用し、良いモノ・サービスを高く提供し、付加価値向上を図るため、地域外への販売や新規事業の立ち上げを行う計画。
    • 地域コミュニティ型:地域の課題解決や暮らしの実需に応えるサービスを提供する小規模事業者による、地域内の需要喚起を目的とした取組等を行う計画。
  • 経営力向上計画加点:国の「経営力向上計画」の認定を受けていること。
  • 事業承継加点:補助事業の完了日までに、代表者の年齢が 60 歳以上であり、かつ、後継者候補が補助事業に関画する場合。※このほか、過疎地域で事業を営む事業者を対象とした加点などが設けられています。

4. 実務的なアドバイス:該当要素は「漏れなく」申請する

加点だけで採択が決まるわけではありませんが、要件を満たしているにもかかわらず申請しないのは、経営上の機会損失と言えます。

「重点政策加点」と「政策加点」の両方のカテゴリーから1種類ずつ、合計2種類の加点を得られるのが理想的です。

例えば、「事業環境変化加点(重点)」に該当し、かつ地域資源を活かした新事業であれば「地方創生型加点(政策)」も申請する。あるいは、事業承継を控えているなら「事業承継加点(政策)」を選択する。このように、自社が該当する要素を丁寧に拾い上げ、漏れなく申請書類に反映させることが、実力伯仲の審査において大切です。

まとめ:審査の観点は「経営のチェックリスト」

審査の観点は、経営者が自社を客観視し、成長への道筋を整えるための「チェックリスト」そのものです。これらの項目に真摯に向き合うことで生まれた「実現可能な成長の設計図」こそが、採択を引き寄せる唯一無二の武器となります。

次回、第4回では「補助金を何に使うか」。対象となる『費目』の正しい選び方と、投資効率を最大化する予算配分について解説します。

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この記事を書いた人

多摩地域を中心に活動する中小企業診断士/FP1級技能士/プログラマーが経営する会社です。会社が本業に集中するための時間を生み出す、「すぐできDX」を推進しています。
経済産業省認定の経営革新等支援機関ですので、安心してご相談下さい。

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