2026年1月末、経営者の皆様が注目する「小規模事業者持続化補助金」の第19回公募要領が公開されました。
補助金は、単なる資金調達の手段ではありません。自社の強みを再定義し、未来への投資計画を明文化する「経営の棚卸し」の絶好の機会です。本連載では、この機会をいかに貴社の持続的な成長に結びつけるか、専門家の視点から紐解いてまいります。
連載第1回のテーマは、申請の第一歩となる「窓口となる組織の理解」と、「地域のパートナーとしての活用術」についてです。
1. 【重要】申請先は「所在地」によって決まっている
持続化補助金において、まず確認すべきは「自社の事業所がどの管轄に属しているか」です。
この補助金は事務局が「商工会議所地区」と「商工会地区」の2つに分かれており、事業所の所在地によって申請先が自動的に決まります。基本的に事業者に選択の余地はありません。
- 商工会議所地区:主に市(特別区含む)の区域
- 商工会地区:主に町村の区域(一部の市を含む)
誤って別の地区のウェブサイトを参照してしまうと、問い合わせ先や提出の細かなルールを取り違えるリスクがあります。まずは必ず、自社の所在地がどちらの管轄かを確認してください。
2. 「商工会」と「商工会議所」:組織構造と支援の特色
申請先が固定されているからこそ、その組織の「特性」を知っておくことは、スムーズな連携のために重要です。特に東京都においては、以下のような構造的な違いがあります。
支援体制の成り立ちと「距離感」の違い
東京都の場合、商工会は「東京都商工会連合会」という上部団体が存在し、事務の共通化や職員の広域的な異動が行われています。一方、商工会議所は各会議所内で事務が完結しており、人材の流動も組織内部に限定される傾向にあります。
- 商工会議所:職員の異動が少ないため、数年、十数年単位での「息の長い付き合い」ができる可能性が高いのが特徴です。深く関わるほど地域の有力なネットワークを活かした活動が期待できます。
- 商工会:比較的小規模な組織が多く、事業者と職員の心理的距離が非常に近いのが魅力です。また、職員の異動があることで関係性が適度にリフレッシュされ、新しい視点からのアドバイスを受けられる側面もあります。
3. 加入の仕組み:活用を広げる「複数加入」という選択肢
原則として申請先は所在地に基づく一箇所ですが、制度上は「複数の団体に加入する」ことや、「商工会と商工会議所の両方に加入する」ことも可能です。
例えば、拠点が複数地域にまたがる場合や、特定の地域の情報ネットワーク・人脈を必要とする場合、それぞれの地域の団体に加入するという戦略もあります。補助金の申請先自体は変わりませんが、情報収集のチャンネルを複数持っておくことは、経営判断の材料を増やすことにつながります。
4. 補助金だけじゃない。会費以上の価値を引き出す活用術
商工会や商工会議所の役割は、補助金の案内だけに留まりません。実は、小規模事業者の経営を全方位から支える「外部の経営企画室」とも呼べるほど、多岐にわたる事業を行っています。
- 税務・記帳支援:確定申告の補助や記帳指導など、日々のバックオフィス業務をサポート。
- 専門家派遣:経営、IT、法務など、特定の課題に対して専門家を招いて相談できる。
- 交流と販路開拓:業種別の交流会や地域イベントへの参画、ビジネスマッチングの機会。
- 公的融資の斡旋:マル経融資など、低利で無担保・無保証の融資制度の活用。
多くの組織において年会費は、これらのサービスをフルに活用すれば非常にリーズナブル(費用対効果が高い)な設定となっています。補助金申請をきっかけに、こうした幅広い支援メニューを使い倒す姿勢こそが、真に「持続化」する経営への近道です。
5. 最初のアクション:まずは「電話をかける」ことから
第19回公募のチャンスを活かすため、最初のアクションとして推奨したいのは、「ひとまず電話をかけてみる」ことです。
窓口も昨今は人手不足の課題を抱えており、公募期間の後半は非常に混み合います。電話をかける前に、以下の2点を整理しておくだけで相談は劇的にスムーズになります。
- 今、自社が抱えている経営課題(人手不足、集客など)は何か?
- 補助金を使って、どのような未来を実現したいか?
これらを簡単で良いので言語化して伝えれば、職員の方は心強いパートナーとして、貴社に最適な支援策を提示してくれるはずです。
次回は、採択への最短ルートとなる「持続化補助金の本来の目的・狙い」について解説します。制度の背景にある国の意図を深く理解することが、説得力のある計画書作成への第一歩となります。

